“14世紀の偉大なイスラム学者のイブン・ハルドゥーン(1332~1406)は、その大著「省察すべき実例の書、アラブ人、ペルシャ人、ベルベル人および彼らと同時代の偉大な支配者達の初期と後期の歴史に関する集成」の著者として知られている。 彼のこの「歴史」においては、魔術、占術、錬金術についても項が裂かれており、ここから当時のイスラム圏の魔術がどのようなものであったのかを知ることができる。 まず彼は魔術を否定する立場にいる。 魔術とは「コーラン」で禁止されているものであるからだ。 とはいうものの、彼は魔術を禁じられてはいるが学問の一つと考え、かなり詳しく書いている。すくなくとも彼は魔術に多大な関心を持っていたことは確実で、頭からサタンの技だの迷信だのと決め付けることはせずに、むしろ「禁断の知」的な扱いをしている。 彼の魔術の定義とは、「人間の精神がどのように準備されれば、他に何の助けもなしに、あるいは天の助けでもって元素の世界に影響を与えることができるかを示す学問」であるという。 そして、彼は魔術を3種類に分類する。 一つは人間の精神力だけで作用を引き起こすもの。 二つ目は天体や四大元素の助け、あるいは「数」の持つ特性の力で作用を引き起こすもの。 三つ目は強烈な想像力でもって作用を引き起こすもの。すなわち強烈な想像力でヴィジョンを作り出し、それを魔術師の魂の感応力によって、そのヴィジョンを「感覚」の水準まで引き下げ、そのヴィジョンが物質的に存在するかのように見えるようにする。そういう魔術であるという。 14世紀のイスラム魔術が、単なるまじない魔術ではなかったことが、こうした記述からもはっきりと分かるであろう。 少なくとも彼が、一部キリスト教神学者のように「悪魔崇拝」で終わらせるような、短絡的な思考の持ち主ではなかったことが、このことからも分かるであろう。 ではなぜ彼は魔術を否定したのか? 全ての人間は、魔術の力を潜在的に持っている。こうした潜在能力は修行することによって、引き出すことができる。だが、こうした修行を行うには、天体、天使、悪霊、高次の世界、あるいは自己の精神の深いところ、こうした者に献身、崇敬することとなる。 これは、アッラー以外の存在に献身行うことであり、不信心な背徳行為である。 したがって、魔術はイスラム法で禁止されるのだという。”
— ハルドゥーンの著書に見られるイスラム圏の魔術 (via ginzuna)


